Tanaka Ohzeki Research Group

情報数物研究会

2006年度 情報数物研究会

日程・場所 11月9日(木) 15:30−17:00 情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 村田昇氏(早稲田大学理工学部)
講演タイトル 学習アルゴリズムの幾何学構造
アブストラクト 機械学習においては,対象とする問題をどのような 枠組みでとらえてモデル化するかが重要であると 同時に,想定したモデルの中で最適解をどのように して求めるかという学習アルゴリズムが重要な役割 を担っている.機械を確率モデルに対応づけて, モデルとアルゴリズムの関係を確率分布の空間の中 で幾何学的にとらえる情報幾何学の考え方は,複雑 なアルゴリズムの働きを理解するため役立つことが 多い.EMアルゴリズム,ブースティング,バギング といったアルゴリズムを取り上げ,これらの アルゴリズムが幾何学的にどのように理解されるか について紹介する.
日程・場所 6月15日(木) 16:30−18:00 工学部電子情報システム・応物系3号館302号室
講演者 大森敏明氏(理化学研究所脳科学総合研究センター)
講演タイトル 海馬CA1錐体細胞の樹状突起における膜特性分布の推定
アブストラクト 従来,単一ニューロンは,等電位の単位素子であると する仮定の下で,単純な演算処理のみを担う"点素子"として モデル化され,神経回路網を構築することによって初めて情 報処理が実現されると考えられてきた.しかし,現実のニュ ーロンは,種々のイオンチャネルが空間的に不均一に分布す る樹状突起をもち,空間的に不均一で非線形な膜応答を示す. 近年の実験技術の進歩により,樹状突起における膜応答を高 い空間分解能で測定することが可能となり,単一ニューロン はこれまで認識されてきた以上に計算論的に高い能力をもつ 単位素子であるとの認識が高まりつつあり,樹状突起による 情報処理機能が再評価されている.記憶機能に関与するとさ れる海馬に注目すると,CA1錐体細胞の樹状突起は,海馬CA3 と嗅内野から異なる2系統の興奮性入力を受けるが,これら の入力は樹状突起上で分離して受け取られることが知られて いる.ここで,海馬CA3入力と嗅内野入力はそれぞれ自己連 想記憶,感覚情報に関与していると考えられており,これら の入力を受ける海馬CA1は嗅内野を介して長期記憶に関与す るとされる新皮質へ出力を与える.よって,海馬CA1は, その樹状突起において膜の電気特性である膜特性を空間的に 不均一に分布させることによって,記憶に関係する2系統の 情報を加工・統合し,記憶の読み出しや書き込みなどの記憶 機能に関係する情報処理を担っている可能性がある.本講演 では,既存の単一ニューロンの数理モデルを概観した後, 最近の樹状突起研究を紹介するとともに,我々が実験生理学 者と共同で行った海馬CA1錐体細胞における膜特性分布推定 に関する理論研究の成果を紹介する.
当日の様子
日程・場所 5月25日(木) 16:30−18:00 情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 竹田晃人氏(東京工業大学大学院総合理工学研究科)
講演タイトル 量子誤り訂正符号の性能評価とスピングラスの相図
アブストラクト 量子情報を安定に保持することは量子計算を実現する上で 重要な課題であり,量子情報に対する誤り訂正符号,即ち 量子誤り訂正符号は欠かせない技術である。その符号を構 成する原理はShorらによって提示された. しかし量子情報(キュービット)は環境の影響を非常に受け 易い為,初期状態の保持が非常に困難であり,その事情か ら量子誤り訂正符号の雑音耐性は一般には非常に小さい. そこでkitaev(1997)は系のトポロジカルな性質を利用した トーラス符号という量子誤り訂正符号を考案した. その雑音耐性は従来の量子符号に比べ非常に良いと予想 されていた. 本講演では,Dennis, Kitaev, Landahl, Preskill(2002)ら により指摘されたトーラス符号の雑音耐性と統計物理学 における希釈磁性体の模型であるスピングラスの相図 との関連性を述べ,その上で講演者らにより研究された 双対性を用いたスピングラスの相図の推定法について 説明し,その手法を用いてトーラス符号の性能について 議論する.
日程・場所 4月27日(木) 16:30−18:00 情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 大久保潤氏(東北大学大学院情報科学研究科)
講演タイトル 複雑ネットワーク生成モデルの数理
アブストラクト スケールフリーネットワークとは次数分布がべき則に従うネットワークを意味する.このような複雑な構造をもつネットワークの生成に関する研究が近年盛んに行われてきた.「優先的結合」と「ネットワークの成長」というふたつの要素が存在する場合にスケールフリーネットワークが生成されることが既に示されている.また,統計力学における平衡系と関連づけられる「成長のないモデル」においても,さまざまな研究が進められている.最近の我々の研究により,ランダム性(quenched disorder) を用いてスケールフリー的な性質をもつネットワークを生成できることが明らかとなりつつある.本発表では,既存のモデルの紹介から最近得られた解析的な結果まで,数理的な側面に着目しながら複雑ネットワーク生成モデルに関する紹介を行う.
■当日の資料(PDF)■
当日の様子