情報数物研究会
2008年度 情報数物研究会
日程・場所 | 2009年2月12日木曜日 午後4時-5時30分 情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 福島孝治氏(東京大学大学院総合文化研究科) |
講演タイトル | ランダムグラフ上の彩色問題の相転移と解構造 |
アブストラクト | グラフ上の彩色問題は典型的な最適化問題の例であるが,同様に統計力学にお ける典型的なスピン模型でもある.後者においては,自然な拡張として有限温 度での性質を調べることができ,彩色可能-不可能等の性質を相転移の観点か ら議論できる.本講演では,ランダムグラフの平均結合数を変化させたときに 現れるガラス的な相の性質をモンテカルロ法を用いて調べた結果を示し,さ らに低温での局所安定解を最尤推定に基づいた統計手法により構成する方法を 紹介する. |
日程・場所 | 2009年1月30日金曜日 午後4時30分-6時 情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 和泉勇治氏(東北大学大学院情報科学研究科) |
講演タイトル | ネットワークトラヒックの異常検知技術 |
アブストラクト | 計算機ネットワークの安全で安定した運用を実現するには,機器異常やセキュ リティインシデントによるネットワークトラヒックの異常状態を効率的に検知 することが重要となる.そのアプローチとして,ネットワークトラヒックの通 常状態を何らかの数理モデルとして定義し,そのモデルからの逸脱の程度を定 量的に評価することにより異常状態を検知する異常検知技術が研究されている. 本講演では,ネットワークのトランスポート層,アプリケーション層の挙動に 着目し,それらの通常状態定義手法と異常状態検出手法を概観する.更に,近 年社会的な問題となっている情報流出事故に対する異常状態検知技術の応用手 法も紹介し,ネットワークトラヒックの異常検知技術の課題について議論した い. |
日程・場所 | 2008年11月13日木曜日 午後4時-5時30分 情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 大久保潤氏(東京大学物性研究所) |
講演タイトル | 確率モデルに潜む数理的概念:壷モデルと凝縮現象/流れと幾何学的位相 |
アブストラクト | 現実に見られるさまざまな現象を調べるための有用な方法のひとつが,確率モデ ルを用いた研究である.現象やモデルを深く理解することは,例えば情報科学の 問題に確率モデルを応用する上でも重要である.特に,モデルに潜む「数理的な 構造」を明らかにすることによって,理解や応用についての見通しが非常に良く なる.本講演では,2つの単純な確率モデルの解析を通して,物性理論などで用 いられている数理的な概念と,確率モデルにおいて生じる現象とのつながりにつ いて説明する.一つは複雑ネットワークや経済物理などとも関係する「壷モデ ル」における「凝縮現象」の数理的構造であり,もう一つは細胞膜での輸送や分 子モータなどとも関係する「流れ」と「幾何学的位相」の関係性である.解析の 詳細にはあまり深入りせずに,確率モデルにおいて見られる非自明な現象が,ど のような数理的な概念とつながっているのかについて解説したい. |
日程・場所 | 2008年6月20日金曜日 午後4時-5時30分 情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 和田山正氏(名古屋工業大学 大学院工学研究科) |
講演タイトル | 相関のある雑音に適した復号法: ---LDPC符号, マルコフ確率場, 分散情報源符号化---- |
アブストラクト |
LDPC(低密度パリティ検査行列)符号の
復号手法として知られるsum-product復号法と
マルコフ確率場における確率推論手法との組み合わせ
により,相関 のある雑音に適した復号法が構成できる.
本講演では,確率推論の観点から上述の復号法に
ついて解説するとともに,この種の復号法のひとつ
の応用としてLDPC符号を利 用した分散情報源符号化
についても議論する。 参考文献 [1] C. M. Bishop: Pattern Recognition and Machine Learning, Springer. [2] D. MacKay: Information Theory, Inference, and Learning Algorithms, Cambridge University Press. |
日程・場所 | 2008年5月29日木曜日 午後4時-5時30分 情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 西山悠氏(東京工業大学 大学院総合理工学研究科) |
講演タイトル | ガウシアングラフィカルモデルに対する確率伝搬法の分散値の厳密解と設計法 |
アブストラクト |
一般にサイクルを含むガウシアン
グラフィカルモデルに,周辺事後確率を効率的に求
める確率伝搬法を適用した場合,計算される周辺事
後密度の平均値は真の値を計算するが,平均値の信
頼度を表す分散値は真の分散値からずれることが知ら
れる.またサイクルを含んだグラフに適用した確率伝
搬法は収束が保証されない問題点がある.本講演では
1重ループで表されるグラフのときに,確率伝搬法が
計算する固定点のメッセージと分散の値の厳密解を
与える.得られた厳密解は,正規分布におけるベーテ
自由エネルギーの最小値に対応し,直観的には,転送
行列法を周期的境界条件の下でも強引に行った場合
に計算される真の分散値からのずれを表す.厳密解
から派生して1重ループのときの確率伝搬法の収束
必要条件を与える.任意のトポロジーで与えられる
ガウシアングラフィカルモデルの場合には,全体の
相関が小さいとしたときの分散値の摂動展開を与え,
確率伝搬法が計算する分散値に対しての1つの補正法
を与える. →■当日の資料(PDF)■ 参考文献 [1] Y. Weiss and W. Freeman, “Correctness of Belief Propagation in Gaussian Graphical Models of Arbitrary Topology”, Neural Computation, 13, 2173-2200, 2001. [2] 西山悠,渡辺澄夫,”ガウス分布におけるベーテ近似の理論解析”,IBIS2007予稿 集,pp.177-183, 2007. |
日程・場所 | 2008年5月9日金曜日 午後3時30分-5時 情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 杉山将氏(東京工業大学大学院情報理工学研究科) |
講演タイトル | 非定常環境下での教師付き学習 |
アブストラクト |
これまで,教師付き学習は訓練用の標本がテスト時に用いる標本と同じ規則に
従って生成されるという大前提のもとで研究されてきた.しかし,現実的な場
面ではこの前提が成り立たないことがある.例えば,顔認識システムでは背景
や光の当たり方が訓練データとテストデータで異なることが多い.迷惑メール
分類システムでは,分類システムだけでなく迷惑メール製作者も学習するため,
迷惑メールデータの分布が変化する.脳波でコンピュータを操作するブレイン・
コンピュータインターフェースでは,脳の非定常性のため脳波データの分布が
変化する.その他,ロボット制御,バイオインフォマティックス,アンケート
データ処理など様々な分野の学習問題で分布の変化が見受けられる.このよう
に分布が変化する状況では,従来の教師付き学習法によって良い学習結果が得
られるとは限らない.この問題に対処すべく,共変量シフトと呼ばれる状況下
での学習法が近年盛んに研究されている.共変量シフトとは,与えられた入力
に対する出力の生成規則は訓練時とテスト時で変わらないが,入力(共変量)
の分布が訓練時とテスト時で異なるという状況である.本講演では,共変量シ
フト下での教師付き学習の最近の研究成果を概説する. 参考文献 [1] 杉山 将. 非定常環境下での教師付き学習:データの入力分布が変化する場合. 画像ラボ, vol.18, no.10, pp.1-6, 2007. http://sugiyama-www.cs.titech.ac.jp/~sugi/2007/covariate-shift2-jp.pdf [2] 杉山 将. 共変量シフト下での教師付き学習. 日本神経回路学会誌, vol.13, no.3, pp.111-118, 2006. http://sugiyama-www.cs.titech.ac.jp/~sugi/2006/covariate-shift-jp.pdf [3] Quinonero-Candela, J., Sugiyama, M., Schwaighofer, A., & Lawrence, N. D. (Eds.), Dataset Shift in Machine Learning, MIT Press, Cambridge, 2008 (in press). |